あるくテック

日々試行錯誤しつつ実践中

授業に心理学がどう役に立つのか

専門学校などで20年ほど講師をした後に大学編入(教育学科通信課程)をし、教育学や臨床心理学などに触れた立場から、感じたことや強く印象に残ったことなど私なりの感想を書きたいと思います。

学生を理解するために

心理学と聞くと、読心術やマインドコントロールを連想される方もいらっしゃるのかもしれません。念のために書いておくと、決して学生や受講者をコントロールするためのものではありません。むしろ、学生・受講者が主体的に伸び伸びと学ぶための授業環境作りに役立つものです。

確かに「勉強大好き!」と思わせる魔法の杖があったら良いですね。真っ先に私自身に使うでしょうけれど。

ところで、教える側もかつては子どもで児童・生徒・学生でした。通ってきた道であるがゆえに、つい学生を分かっているつもりになりがちだと思います。ですが私自身、自分についてどこまで理解しているでしょう。

大学では、心理学を臨床・教育・産業などにおける問題解決に用いるための応用心理学の分野から、臨床心理学、発達心理学教育心理学などを学びました。

私が特に影響を受けた理論

  1. エリクソンの心理社会的発達理論
  2. カール・ロジャーズの来談者中心療法
  3. マズローの人格発達理論
  4. 構成的グループエンカウンター
  5. 箱庭療法風景構成法

1. エリクソンの発達課題

エリクソンは人間の誕生から死までの一生を8段階に分け、身体的成長ではなく心理的発達の視点から、各段階の心理的課題を提唱しました。その中でも青年期(13~20歳頃)については、社会状況に最も影響を受けやすい段階であることと、自我の確立という人としてとても大切かつ困難な課題を抱えることなど、不安的さを理解する手掛かりになりました。(他にも若者文化の影響拡大やそれに伴った成人の権威の失墜などといった現象を理解するのにも大変役立ちました。興味深かったのでまたいつか書きたいです。)

これから社会人となる学生を理解し手助けするのに欠かせない知識だと思いました。

2.カール・ロジャーズの来談者中心療法

カール・ロジャーズの提唱した来談者中心療法では、心理療法においてカウンセラーがクライエント(患者)に対して治療についての指示をするのではなく、クライエント自身の気付きや成長に重きを置きます。

そこで重要な役割を果たすのがカウンセリングという場と、その場におけるカウンセラーのあり方で、教室と教師(講師)に通ずると感じた点が多々ありました。成長にとってどのような心理状態が望ましいのか、それはどのようにして実現できるのかなどです。

実際に、カウンセラーの有り方(受容・共感・自己一致)を、教師などに応用したカウンセリング・マインド(受容・共感・傾聴)という考え方があります。カウンセラーによって受け止められ肯定されることでクライエントが自己表現や成長ができることは、教師と児童・生徒においても当てはめることができます。

ただし、単に児童・生徒・学生に対して何でもOKとすることでは無く、相手を一人の人として尊重することだと考えています。

3.エイブラハム・マズローの人間の欲求の階層

マズローは人の動機付けの発達を5段階で表しました。そして生理的、安全、愛と所属、尊敬と自尊などの各レベルの欲求がある程度満たされて初めて、人は自己実現の欲求を満たすべく行動を起こすようになると提唱しました。

マズローの説については実証不足などとして批判もあるそうなのですが、授業における安心・安全やモチベーションについての大きなヒントとなりました。

また、愛と所属、尊敬と自尊の欲求が損なわれると、攻撃と敵意の欲求が引き起こされるというのもとても興味深い点でした。

4.構成的グループエンカウンター

教室の中での心の成長を目的として、エクセサイズと呼ばれる活動を通しての自己や他者の理解、自己受容、信頼関係作りを行います。安心安全な授業作りにとって重要なものとなっています。また心理学やアクティブラーニングを強く意識するきっかけでもあったように思います。

大学の授業(スクーリング)で知り、私がすぐに授業に取り入れたことの代表といえます。また既に実践されている先生方から多くの情報をご提供頂いたことも大きな支えとなりました。提唱者である國分先生の直筆サイン本など多くの書籍を貸して下さった先生、オリジナルではないかと思うのですが大変良いエクセサイズの情報を快く提供して下さった先生、本当に感謝しています。

授業では学生に意義を説明した上で協力をお願いし行っています。その感想や効果も改めて書きたいことの1つですが、一言でいえば、コミュニケーションが活発になり授業がより面白くなりました。ただ最初に実践し始めたときは本当に勇気が要りました。

5.箱庭療法風景構成法

私は教室は「枠」と考えるようになりました。

箱庭療法風景構成法などでは「枠」の存在を重視しています。砂を入れている箱の枠、紙に最初に描く四角形の枠、そこに枠があるから安心して内面を表現できるといわれます。教室には学びにおける「枠」の役割があるのではないでしょうか。それがあるからこそ学生は安心して活動ができる。講師と学生、学生同士。それぞれも「授業」という枠を形作っていると考えています。

学生の理解と授業

例えば授業が上手くいっていないと感じる時、それは学生個々の努力の問題ではなく、青年期特有の課題が関わっているのかもしれません。学生が授業に集中できないのは、怠惰などではなく何らか心理的な要因が関わっているのかもしれません。

学生を理解することは、学生が、そして学生同士で協力して成長できる授業作りに役立ちます。

学習指導要領において、現在の生徒指導は、全ての教師によってあらゆる機会をとらえて行われるべきものとされています。授業中も、成長の場であることは間違いないのです。また心理的安心安全は、学習のより深い理解に欠かせないものです。

次の機会には、構成的グループエンカウンターや学び合い(アクティブラーニング)の試みについても書いてみたいと思っています。

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続き >授業に心理学。その効果とは? - あるくテック

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2018/2/6 誤字脱字など修正しました。